令和8年の診療報酬改定では、生活習慣病管理料に関して実務へ直結する見直しが複数行われました。特に、包括範囲の整理や新たな加算の創設、データ提出に関する評価の再編など、日常診療の運用に影響する内容が目立ちます。前回(令和6年度)で導入された制度をベースにしつつ、「質の評価強化」と「実務負担の見直し」が大きなテーマになっています。本コラムでは、現場で押さえておくべき主要な変更点を整理します。
1. 生活習慣病管理料2の包括範囲見直し
生活習慣病管理料2では、これまで包括されていた診療行為の一部が見直され、出来高算定へ移行する項目が明確化されました。これは、患者に別途行われるべき医学管理や主病と直接関係ない疾患に対する医学管理を適切に推進する観点から行われるものです。
≪生活習慣病管理料2の包括対象外に追加された医学管理の例≫
- 在宅自己注射指導管理料(糖尿病に係るもの以外)
- 特定薬剤治療管理料
- 傷病手当金意見書交付料
- 悪性腫瘍特異物質治療管理料 など
たとえば、内科(高血圧症)で生活習慣病管理料2を算定している患者は、整形外科(骨粗鬆症)での在宅自己注射指導管理料は別に算定できませんでしたが、6月以降は出来高算定が可能になります。
取りこぼしに注意です。
2. 新設された連携強化加算の概要
糖尿病の重症化予防を推進する観点から、眼科又は歯科を標榜する他の医療機関との連携を行う場合の評価を目的として新設された項目です。これらは、生活習慣病管理における多職種・多機関連携を評価する新たな枠組みです。
「多業種連携」は今回の改定のトレンドのひとつにもなっています。
眼科医療機関連携強化加算
- 点数:60点(年1回に限る)
- 算定要件:糖尿病を主病とする患者について、患者の同意を得て、診療に基づき、糖尿病合併症の予防、診断又は治療を目的とする眼科診療の必要を認め、患者が眼科を標榜する他院への受診を行うに当たり必要な連携を行った場合
歯科医療機関連携強化加算
- 点数:60点(年1回に限る)
- 算定要件:糖尿病を主病とする患者について、患者の同意を得て、診療に基づき、歯周病の予防、診断又は治療を目的とする歯科診療の必要を認め、患者が歯科を標榜する他院への受診を行うに当たり必要な連携を行った場合
今後は紹介・逆紹介の流れや情報共有の質も、より重要な評価要素となります。
また、紹介状を書いただけ、などの形式的な紹介では不十分な可能性があります。他院に受診する予定日を定め、更に、次回の受診時に他院への受診状況を確認し、カルテにその記録を残す必要があります。
受診~紹介を経て他院(眼科・歯科)受診までのフローを作成するなどして、事務さんから医師に積極的に働きかけましょう。
3. 生活習慣病管理料1における検査要件
生活習慣病管理料1では、血液検査等を少なくとも6か月に1回以上実施することが必須となりました。
他院で実施した血液検査等の結果(健診結果も含む)を参照できる場合はこの限りではありません。ただし、該当検査の結果をカルテに記録する必要があります。
これまで投薬のみだった患者さんには頻回な検査と捉えられるかもしれませんが、より適切な病状管理であることを理解いただかなければなりません。
単に管理料を「算定する」だけでなく、「定期的な評価に基づく医学的管理」がより厳格に求められています。
4. 外来データ提出加算の見直し
従来の外来データ提出加算は、「充実管理加算1~3」に再編にされました。
・脂質異常症・糖尿病・高血圧症の各疾患別×3段階の実績別に9区分に細分化
・生活習慣病に関連するガイドライン等に沿った診療を行う医療機関を高く評価する観点から、診療情報の請求状況、治療管理の状況等の診療の内容に関するデータを提出した医療機関のうち、質の高い生活習慣病管理に係る実績を有する医療機関を評価する仕組み
算定条件
- 充実管理加算1 30点
- 算定要件①:外来医療等調査に適切に参加し、調査に準拠したデータを提出すること
かつ - 算定要件②:疾患の管理についての十分な実績
→ 生活習慣管理料1又は2を算定する患者について、充実管理加算の届出を行う保険医療機関全体のうち、上位20%であること - 充実管理加算2 20点
- 算定要件①:同上
かつ - 算定要件②:疾患の管理についての相当の実績
→ 生活習慣管理料1又は2を算定する患者について、充実管理加算の届出を行う保険医療機関全体のうち、上位50%であること - 充実管理加算3 10点
- 算定要件①:同上
届出の要否
- いずれも厚生局への届出が必要
単なる提出ではなく、「質の高いデータ活用」が評価される仕組みへと変化しています。
[経過措置]
令和8年3月31日時点において現に外来データ提出加算に係る施設基準の届出を行っている医療機関にあっては、充実管理加算1の実績に係る要件を満たすものとする
5. 療養計画書の変更点
療養計画書については、運用負担軽減の方向で見直しが行われました。
- 初回用・継続用が1枚に統合
- 患者署名が不要に(従来通り患者の同意は必須)
これにより、書類管理の簡素化と業務効率化が期待されます。
6. カルテ記載ルールの強化
次回来院予定日のカルテ記載が必須化されました。
これは、
- 継続的管理の担保
- 計画的な受診の促進
を目的としたものです。
記載漏れは査定リスクにつながるため注意が必要です。
Q.次回受診する日について患者と十分な相談を行ってもなお、患者都合で予約又は受診を行う日付が確定しない場合は?
A.次回の受診が必要な時期について、患者に対して十分な指導を行うこと【疑義解釈その1(3/23)】
まとめ
令和8年改定における生活習慣病管理料の見直しは、
- 包括から出来高への整理
- 多機関連携の評価強化
- データに基づく診療の推進
という3つの軸で整理すると理解しやすくなります。
このような改定を踏まえると、日常診療においては単に算定要件を満たすだけでは不十分であり、記録・連携・データ活用を一体的に運用する体制づくりが不可欠です。例えば、療養計画書の内容をチームで共有する仕組みや、検査・指導・紹介のタイミングを標準化した院内フローの整備などが重要になります。
したがって、早い段階で院内の業務フローや役割分担を見直し、医師だけでなく看護師・事務職員を含めたスタッフ全体で共通理解を持つことが、改定への円滑な対応と診療の質向上の両立につながるといえます。




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